人質として嫁いだのに冷徹な皇帝陛下に溺愛されています
「お前と話すのはなかなか面白い。だが、このままでは話が尽きない」
「そうでございますね」
「特に猫の話になれば……」
「ああ、それはもう朝まで語りつくしてしまいます。私には生まれたときからそばにいるオタマという白猫がおりましてですね。嫁ぐ際にはオタマに散々鳴かれて大変でございました」
「本当に話が尽きそうにないな」
「えっ……?」
ヴァルクはとんっとイレーナの肩を押した。
イレーナはそのままベッドに仰向けに倒れる。
目の前には彼の紅い瞳がぎらぎらと光って見える。
「俺はただ話をするためにここへ来たのではない」
イレーナはどきりとして、自分の役割を思い出す。
つい、うっかり話に夢中になって忘れてしまいそうになっていた。
「申しわけ、ございません……」
「だが、お前の話は面白い。このまま語り尽くすのも悪くはないが、やはり俺はお前のことをもっと知りたい」
「わ、私でございますか?」
「ああ、そうだ。たとえばお前がどう啼くのか」
ヴァルクはイレーナの腕をつかんで、首筋にキスをした。
「ひゃっ……」
イレーナは必死に悲鳴を抑える。
驚愕のあまり目を見開いて、ただ天蓋を見つめた。
その胸中はパニックで、先ほどまで落ち着いていた鼓動が急激に高鳴り出した。