人質として嫁いだのに冷徹な皇帝陛下に溺愛されています

 香ばしく焼いた肉の塊とじゃがいもを揚げたもの、チーズやハムを挟んだサンドウィッチ、彩りのいい野菜のサラダ、クロワッサンやスコーン、ケーキなど。
 リアが丁寧に肉の塊を一切れカットして皿にのせ、ソースをかけてくれたが、正直これだけでも十分すぎるほどだ。
 何せ、実家(カザル公国)での朝食はパンケーキとサラダとスープというシンプルなものだったからだ。

「いただきます」

 イレーナはナイフとフォークで肉をさらにカットして口に入れる。
 食べた瞬間、目の前に花畑が広がる光景が見えた。
 それほどに、美味だった。

(なんって美味しいのーっ! こんなに美味しいお肉料理を食べたのは初めてだわ!)

 イレーナがぱくぱく食べ続けるものだから、リアも使用人たちもクスクス笑った。

「どうしたの? やだ、私が頬張ってしまったからね。品がなくてごめんなさい」
「いいえ、違います。お肉を欲していらっしゃるので、昨夜はよほど体力を使われたのかと……」

 イレーナはボンっと頭から火が出るほど熱くなり、顔から首まで赤面した。




< 29 / 177 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop