人質として嫁いだのに冷徹な皇帝陛下に溺愛されています
そして翌日、イレーナの部屋に護衛騎士が3人訪れた。
「これから妃さまのおそばで仕えさせていただきます」
「そ、そう……よろしくね」
イレーナはドン引きしている。
剣を携えたがっちりした体格の男たちがイレーナの背後に並んで歩くのだ。
ものすごい威圧感である。
(監視にしてはやりすぎじゃないかしら?)
となりに侍女のリアがいることが唯一の救いだ。
彼女は明るい表情でイレーナの心を和ませてくれる。
「おやおや、これは。カザル公国の姫君ではございませんか?」
ねちっこい声をした髭を生やしたおじさんが、イレーナの前に立ちふさがった。体格は小太りで、細い目をじっとこちらに向けている。
「えっと……?」
知らない人なのでイレーナはどう反応すべきかわからない。
困惑しているとリアがとなりでひっそりと耳打ちした。
「スベイリー侯爵です。アンジェさまの父君に当たるお方ですよ」
それを聞いたイレーナは急に緊張感が増した。
(正妃さまの父親? であれば、私のことが気に食わないに違いないわ)
イレーナは警戒しながら相手の様子をうかがった。