人質として嫁いだのに冷徹な皇帝陛下に溺愛されています

 ヴァルクはそう言って立ち上がり、さっさと立ち去ってしまった。
 侍従たちも退室する。
 残されたイレーナはドキドキしながら腰が抜けそうになるのを何とか堪えた。

「おおっ、陛下がさっそく妃と夜をお過ごしに」
「早くも皇子の誕生が楽しみでございますな」

 ひそひそと話す家臣たちに囲まれて、イレーナはいたたまれない気持ちになった。
 すると、侍女がイレーナに声をかけた。

「ではイレーナさま、参りましょう。お食事のあと湯浴みがあります」

 そう言われて、イレーナはますます緊張した。
 そして、心の中で叫ぶ。

(お母さま、どうか私を見守ってください)

 イレーナ、18歳。初めて男と夜をともにする。



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