人質として嫁いだのに冷徹な皇帝陛下に溺愛されています
4、正妃の秘密を知りました
歴史書の棚で賢者のように冷静でいたら奥の部屋から艶のある声で一気に皇帝との夜を思い出して赤面するイレーナ妃。
(違う違う違う! 私ったらなんてことを!)
ここは図書館だ。
城内のあらゆる人間が利用する人目につきやすい場所である。
そんなところで一体誰がこのような破廉恥な行為に及ぶのか。
(まったく理解できないわ!)
そんなことを思いつつも扉にこっそり耳をすませてしまう好奇心はぬぐえない。
イレーナが気になることはただひとつ。
一体、誰と誰がおこなっているのかということだ。
(侍女と騎士とかありそうだわ。もしくは侍女と庭師という渋い関係も。もしかして、侍女と陛下の重臣だったりして)
そんな考えをめぐらせていたところ、突如静かになった。
イレーナはこそっと近くの本棚の後ろへ隠れる。
しばらくすると扉が開いて、男が出てきた。
褐色の肌をした体格のいい男で、腰には剣を携えている。
(まさか、本当に騎士だったなんて。こんなまっ昼間からいいのかしら? 仕事は?)