人質として嫁いだのに冷徹な皇帝陛下に溺愛されています
次にフードを目深にかぶった女性が出てきた。
ふわっと美しい金髪がフードからはみ出している。
すると、騎士らしき男が女の髪をすべてフードの中にしまい込んだ。
「ありがとう」
「いいえ。少し無理をしましたな。お身体は平気ですか? アンジェさま」
イレーナは思わず声を上げそうになり、とっさに自分の口を手でふさいだ。
「名を呼ばないで。誰が聞いているかわからないわ」
「ご心配なさらず。もし見られたら、私がその者を抹殺して口封じをします」
イレーナは驚愕の表情でぐっと息を呑む。
「もう、あなたのそういうところ、陛下にそっくりだわ」
イレーナは額から冷や汗が滲み出る。
「何をおっしゃる? 残虐非道なあのお方に比べたら私など可愛いものではないですか」
イレーナは硬直したまま動けなかった。
ふたりはやがて何事もなかったかのように立ち去っていく。
そして、図書館を出る際にイレーナの護衛騎士たちと会ったようで、彼らの威勢のいい声が聞こえてきた。
「団長、お疲れさまです!」
(団長!?)
イレーナは驚愕した。
「占い師さまもご一緒だったのですね?」
(占い師!?)
もう、どこから突っ込んでいいのかわからなかった。