人質として嫁いだのに冷徹な皇帝陛下に溺愛されています

 目の前にはサンドウィッチやスコーン、苺のケーキやクッキー、マカロンにチョコレートと食べきれないほどのお菓子が並ぶ。
 紅茶もいい色をして、ふわっと湯気が立つ。
 しかし、イレーナは躊躇してしまった。
 額に冷や汗をかく。
 すると、アンジェが紅茶をひと口飲んで笑った。

「毒なんて入っていないわよ。どうぞ」

 万が一にも毒殺されるのではないかと考えていたイレーナの心情を見事に読みとられた。

(まあ、ここで死んだら真っ先にアンジェさまが犯人扱いされるものね)

 イレーナはひそかに深呼吸する。

「いただきます」

 紅茶をひと口飲むと、香りがよく、とても美味だった。

(どうやら考えすぎだったようね)

 イレーナはほっと安堵したところへ、アンジェが話を切り出した。

「あなたはわたくしと騎士団長の関係を知ってしまったわね」

 その言葉にイレーナは動揺し、お茶を吹きそうになった。
 慌てて答える。

「誰にも言うつもりはありません。陛下にも絶対に言いません」
「そう。いい子ね」
 
 アンジェはにっこりと笑った。



< 46 / 177 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop