人質として嫁いだのに冷徹な皇帝陛下に溺愛されています
目の前にはサンドウィッチやスコーン、苺のケーキやクッキー、マカロンにチョコレートと食べきれないほどのお菓子が並ぶ。
紅茶もいい色をして、ふわっと湯気が立つ。
しかし、イレーナは躊躇してしまった。
額に冷や汗をかく。
すると、アンジェが紅茶をひと口飲んで笑った。
「毒なんて入っていないわよ。どうぞ」
万が一にも毒殺されるのではないかと考えていたイレーナの心情を見事に読みとられた。
(まあ、ここで死んだら真っ先にアンジェさまが犯人扱いされるものね)
イレーナはひそかに深呼吸する。
「いただきます」
紅茶をひと口飲むと、香りがよく、とても美味だった。
(どうやら考えすぎだったようね)
イレーナはほっと安堵したところへ、アンジェが話を切り出した。
「あなたはわたくしと騎士団長の関係を知ってしまったわね」
その言葉にイレーナは動揺し、お茶を吹きそうになった。
慌てて答える。
「誰にも言うつもりはありません。陛下にも絶対に言いません」
「そう。いい子ね」
アンジェはにっこりと笑った。