人質として嫁いだのに冷徹な皇帝陛下に溺愛されています
「でも、あの……どうして?」
イレーナはずっと考えていたが、不思議でならないのである。
あの超絶元気な皇帝陛下のことを考えたら、わざわざ不倫をする必要などあるだろうか。
アンジェは平然と答える。
「わたくし、陛下と相性が悪いの」
イレーナは再度お茶を吹きそうになった。
(何言ってんの? この人)
イレーナは羞恥のあまりアンジェから目をそらす。
するとアンジェはにこにこしながら、ふふっと笑った。
「あら、可愛らしいわね。顔を真っ赤にしちゃって」
イレーナはハンカチで口もとを拭いて、背筋を伸ばす。
(こうなったらもうヤケだ!)
イレーナは冷静に真面目な顔で堂々と訊いてみることにした。
「つまり騎士団長さまとは最高の相性ということでよろしいでしょうか?」
(うわ、何言ってるの? 私、死にたいの?)
心臓がバクバクうるさいが、動揺しないように真顔でアンジェを見据えるイレーナ。
するとアンジェは笑みを浮かべたまま冷静に返答した。
「そのとおりよ」
イレーナは目を見開いてアンジェを凝視した。
(背後に断頭台が見えるわ……)