人質として嫁いだのに冷徹な皇帝陛下に溺愛されています

5、皇帝陛下が激甘すぎて寝られません


 皇帝ヴァルクがイレーナの部屋を訪れるのは実に5日ぶりのこと。
 正妃アンジェの真実をこの目で見てからは初めての対面となる。
 つまり、イレーナは緊張している。

(私は何も知らない。見ていない。何を訊かれてもすっとぼけるのよ)

 イレーナがあまりにも深刻な表情でソファに座り込んでいるので、リアは壮大な勘違いをした。

「イレーナさま、陛下と久しぶりに過ごされるから緊張なさっているんですね!」

 イレーナは無言でリアを見つめる。
 リアは女神のような微笑みを向けて、優しく語りかける。

「ご安心ください。陛下はきっと何があってもイレーナさまだけは処刑されたりしませんよ」
「励ましになっていないんだけど」

 むしろ処刑台に行く前にあの騎士団長の手で殺されそうだ。
 いやしかし、アンジェは別にバレてもいいと言っていたし、そこまで気にする必要はないのかもしれない。
 だが、皇帝と騎士団長の信頼関係は崩壊するだろう。
 ひいてはこの国の命運を左右する問題に発展しそうだ。

(え、待って。もしも今、内戦が起こったら、騎士団長はアンジェさまの父であるスベイリー侯爵につくわよね。これすっごくまずいのでは?)


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