人質として嫁いだのに冷徹な皇帝陛下に溺愛されています
慌てて離れると、クマはふたたびふわりと元の形に戻った。
イレーナは驚いて首を傾げていると、ヴァルクがにやりと笑って言った。
「それは商人ギルドに提案して作らせた試作品だが、発案者としてどう思う?」
「え? え……このクマちゃんのことですか? まさか羽毛でございますか?」
「そのとおりだ。お前の言ったアヒルで作らせたぞ」
イレーナはぽかんと口を開けて絶句した。
たまたま公国にいた頃に、商売人からもらった本に書かれていたことなのだ。
なんとなくそうなんだと頭の片隅に入れておいた知識を役立ててくれるとは驚きだ。
「調査してみたら、セシルア王国はまだアヒルを使ったことがないようだ。かの国ではアヒルは食用だからな」
「そうでございますか。では、今後は安価で大量生産できれば民たちも今よりふかふかのお布団で眠れますね」
「そうだ。ところで触り心地はどうだ?」
「たしかにマザーグースよりは劣りますが、それでも硬いお布団よりずっとふわふわで気持ちいいです」
「よし、わかった。さっそく生産会議をおこなわせるが、お前も参加するか?」
「ええっ? それは……」
イレーナの胸中は歓喜にわいた。