人質として嫁いだのに冷徹な皇帝陛下に溺愛されています

「お食事のあとはお庭を散歩されますか? 軽く運動をされて湯浴みをされるとすっきりしますよ」
「ええ、そうするわ」

 侍女の気遣いがイレーナの心に沁みる。
 食事は美味しいが、今夜のことを考えると緊張しすぎてあまり進まなかったから。


 日の暮れた庭園は照明の光で幻想的だった。
 帝国では夜に光を灯す技術が発達しているとはイレーナも耳にしていたが、これほど明るく庭園を照らすことができるとは思ってもみなかったのだ。

「素晴らしいわ。本当にこの国は発展しているのね。見るものすべてが初めてでわくわくするわ」
「そのように言っていただけて光栄でございます」

 イレーナに付き添っている侍従が丁寧に返答した。
 これほどの技術があるのだから、よほど教育機関もしっかりしているのだろうとイレーナは思う。

「この国の学校や施設を見学してみたいわ。もちろん今すぐというわけにはいかないけれど、陛下がお許しくださるならばぜひ」
「それは大歓迎でございます。陛下もきっとお許しくださいますよ」
「貴族の学校だけでなく、平民の学校にも訪れたいわ。この国はいくつあるのかしら?」
「はて……?」

 侍従が突然、首を傾げる。



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