人質として嫁いだのに冷徹な皇帝陛下に溺愛されています
イレーナはつい熱弁してしまい、ハッと我に返って深く頭を下げた。
「申し訳ございません。少々出しゃばりました。お忘れくださいませ」
側妃の分際で皇帝に向かって意見を述べるなどあってはならない。
頭を下げたまま震えるイレーナの手を、ヴァルクは寝転んだまま握りしめる。
「あ、あの……」
「学校か。なるほど。考えてみよう」
「え? 本当でございますか?」
イレーナは驚愕し、思わずヴァルクの手を両手でぎゅっと握り返した。
「確かに国のためになる人間が増えるのは悪くない。だが、それには時間がかかるな。民の中でも王政に不満を持つ者がいるだろう。そのような者が学を持つと反逆を企てかねない。このことは時間をかけて話し合う必要がある」
「も、もちろんですわ!」
まさか自分の意見を受け入れてくれるとは思わず、イレーナは笑顔で明るく答えた。
それを見たヴァルクは満面の笑みを浮かべた。
その表情に、イレーナは胸が焦げつくほど熱くなった。
(やだ、どうしよう……好き、かも……)