人質として嫁いだのに冷徹な皇帝陛下に溺愛されています
6、まがりなりにも姫であり妃です
この日、イレーナは朝早くから起きて入念に身支度を整えた。
ドレスは濃いブルーで淡い白と青の薔薇が散りばめられている。
髪型は緩く巻いてドレスの装飾と同じ色の薔薇で飾られている。
正妃が赤のドレスを好むから、イレーナはこのような形となった。
本日はパーティではなく、皇帝と帝国議会の者たちに加えて貴族たちが集まる会議である。
国の今後について話し合う場にイレーナの出席を皇帝が決めたのである。
当然イレーナは怯えた。まさかそんな事態になるとは思いもしなかったから。
「アンジェさまに負けないくらいお美しいですよ」
リアは早朝から気合いを入れてイレーナを着飾った。
「反感を買わないかしら?」
「堂々としていればよいのです。イレーナさまは陛下の妃さまなのですから」
「座っていればいいのよね?」
「そうでございます。凛とした姿勢で黙って連中を視線で刺していればよいのです」
「連中ってあなた……面白いわ」
「ありがとうございます!」
イレーナが敗戦国の同盟国の公女で人質として嫁いだことを見下している連中は結構いるらしい。
だから、皇帝はその場でイレーナが高貴な身分であることを強く印象づけたいのだろう。
「やってやるわ」
イレーナは拳をぐっと握りしめた。