人質として嫁いだのに冷徹な皇帝陛下に溺愛されています
だが、イレーナの危惧したとおり、貴族たちは次々と異論を発した。
「学問は貴族のものではないか。平民が学を得るなど……」
「身分違いも甚だしい」
「小国の姫の分際で帝国に意見をするとは身の程知らずな」
予想はしたが、あまりにも否定的な意見ばかりだ。
すぐには貴族たちの心を変えることはできないだろう。
それはイレーナにもわかっている。
自分の提案が議論の場に持ち出されただけでよかったと思うことにした。
イレーナが諦めかけたとき、思いがけずアンジェが貴族たちを制止した。
「面白い提案ですわね。問題は山積みでしょうが、それについてはぜひ、イレーナ妃の意見をお聞きしませんこと?」
イレーナはどきりとしてアンジェを見つめた。
アンジェはにっこりと笑い、それからヴァルクに顔を向けた。
「いかがでございましょう? 陛下」
「ああ、そうだな。何か疑問があるなら皆申してみよ」
ヴァルクは貴族たちに向かって言い放つ。
すると、ひとりが「恐れながら申し上げます」と口を開いた。