人質として嫁いだのに冷徹な皇帝陛下に溺愛されています
「これまで学問は貴族のものとされてきました。平民が学を得ることで貴族社会ひいては王権にも影響を及ぼす可能性がございます。これについてはどのようにお考えでしょうか?」
ヴァルクは笑みを浮かべたまま、話を終えた者をじっと見つめた。
それからイレーナへ顔を向けて訊ねる。
「さて、イレーナ。君はこれに対してどう思う?」
急に話を振られたイレーナはどきりとして冷や汗をかいた。
鼓動がバクバク鳴り続ける。
(落ち着くのよ。考えていることを冷静に伝えるだけ)
イレーナは深呼吸をして、背筋を伸ばした。
そして答える。
「貴族と平民の学校は根本的に別であると考えています。平民には読み書きの他に商売に関する知識や植物動物などの専門的な知識を学ぶ機会があればと思います。もちろん政治に関わる部分に関しては貴族の学校でのみ学べるよう制度を整えるのです」
イレーナの意見に貴族たちが顔を見合わせて話す。
「つまり平民に合わせた学校ということか」
「確かに、平民がもっと商売が上手くなれば国の税収も増えて豊かになることだろう」
風向きが少し変わった、とイレーナは口もとに笑みを浮かべた。