人質として嫁いだのに冷徹な皇帝陛下に溺愛されています
「平民の学校はございませんが」
「ええっ? ないの? だって、こんなに素晴らしい技術力を持っている国なのに、貴族の学校を出た者たちだけで作っているの?」
「いいえ。この技術はすべて他国からの輸入でございます。この国で技術者を養成してはおりません」
「そんな! もったいないわ。だって、こんなに恵まれた国なのに」
イレーナの育ったカザル公国は民が食べていくだけで精一杯で、なかなか教育に力を入れることができなかった。
それでも、イレーナの父はどうにか平民の学校を建てたのだが、すべての者を受け入れることはできなかった。
「我がドレグラン帝国は騎士の養成にもっとも力を入れております。この国は昔から戦争が絶えず、多くの国から狙われてきました。ゆえに戦闘力の強化に特化しているのでございます。これらの技術を他国から取り入れるのも戦に勝利した証でございます」
イレーナは唖然としてしまった。
いくら理由があるとはいえ、せっかくこれほど大きな国で、金もあるのに、力を入れているのが戦闘に関することだけだとは。
「皇帝陛下は内政にもっと力を入れるべきだわ」