人質として嫁いだのに冷徹な皇帝陛下に溺愛されています
ぼそりと言ったイレーナの言葉に、侍従がとっさに反応する。
「そのことを陛下に告げてはなりません。陛下はご自身のやり方に口出しをする者をもっとも嫌います。普段は温厚なお方ですが、そのお怒りに触れると首を落とされるだけでは済みません」
「えっ……それ以外にどんな罰が?」
ひやりと背筋に悪寒が走るイレーナに向かって、侍従は淡々と話す。
「長時間の拷問の末かろうじて生かされた状態で城門に括りつけられじわじわと殺されるのです」
「ちょっ……それ、冷静に言わないで」
「あ、そのあと火刑に処されます。まだ息がある場合とんでもない苦痛ですね」
「もういいわ!」
イレーナは全身に鳥肌が立った。
聞くんじゃなかったと今さらながら後悔する。
「ですが、上手にご機嫌取りをなされれば陛下は穏やかに接してくださるでしょう」
侍従は急ににっこりと笑ってそう言ったが、イレーナの中では噂どおりの冷酷非道な皇帝陛下のイメージに戻ってしまっていた。