冴えない男子は学校一の美少女氷姫と恋人になる
「あのー、西園寺さん、誠也と付き合ってるのって本当なんですね」
自分以外の人に『誠也』と呼ばれるのが気に触った。
誰だか知らないが、誠也と付き合っているのは瑞希自身で、名前で呼ぶのは恋人の特権だと思っていたから。
瑞希はピクリと眉を動かし、ポニーテールが似合う少女を見つめる。顔は可愛い部類に入るが、瑞希の足元には到底及ばない。
そんな少女に瑞希は、いつものように冷たい口調で返事をした。
「アナタは……どちら様でしたっけ?」
「あっ、ごめんなさい。私は前原瑠香と言います。えっと、一応誠也の幼なじみなんですよ」
幼なじみがいたなんて聞いていなかった。
隠し事をされたみたいで、瑞希の心が黒いモヤに覆われる。
誠也との関係は偽りの恋人──それだけなのはずなのに、なんだか負けた気がして自分が許せなかった。
「そう、幼なじみがいたなんて知らなかったわ」
「誠也から聞いてなかったんですね。もう、いつも肝心なことを言わないのは昔からなんだから」
瑞希自身が知らない誠也を知っている女。
理由が分からないが、それがなんだか許せない。
まるで誠也が突然遠くへ行ってしまったようで、胸がキューっと締め付けられた。
「そういえば最初の質問、誠也と本当に付き合ってるかよね? もちろん本当ですわ。昨日デートしたばかりですし、それに──お互い抱き合いましたからね」
負けず嫌いなのか、あの恥ずかしい出来事をあっさり告白する。
しかも脚色までして瑠香からマウントを取ろうとした。
「そう、だったんですね……」
瑠香は肩を落として本気で残念そうだった。
心ここに在らずでその場を離れてしまう。
そんな瑠香の背中を見た瑞希は、心の中で勝利したことを喜び、口元には笑みを浮かべていた。
「どーしよー、沙織ー」
「どうした、どうした。何があったのさ」
泣きながら親友である四ノ宮沙織に相談する瑠香。
噂が本当だったことが余程ショックなようで、立ち直れなさそうなオーラを撒き散らす。
ずっと言いたくても言えなかった好きというたった二文字。
今さら後悔してもその言葉を伝えることが出来ない。
瑠香は自分の勇気のなさに嫌気がさしていた。
「噂は本当だったんだよー」
「噂……? あぁ、鈴木くんと西園寺さんのね」
「これから先、私どーしたらいいかなー」
ふたりが付き合っているのなら、略奪愛くらいしか方法がない。
沙織は瑠香の頭を優しく撫でながら、ひとまず落ち着かせようとした。
「少しは落ち着いた?」
「うみゅ……」
「そうだねー、とりあえずさ、鈴木くんと話してみたら? 幼なじみなんだし、気軽にね?」
「そうだね、私、頑張る! 頑張って誠也と話してみるよ」
ついさっきまで涙目だったのに、急に元気を取り戻した瑠香。
小動物のような仕草が可愛らしく、沙織も微笑みながら暖かい眼差しを向ける。
親友であり妹のような存在。
同い年とはいえ、沙織はどことなくお姉さん気質。
怒ったことなど一度もなく、聖母のような性格だった。
自分以外の人に『誠也』と呼ばれるのが気に触った。
誰だか知らないが、誠也と付き合っているのは瑞希自身で、名前で呼ぶのは恋人の特権だと思っていたから。
瑞希はピクリと眉を動かし、ポニーテールが似合う少女を見つめる。顔は可愛い部類に入るが、瑞希の足元には到底及ばない。
そんな少女に瑞希は、いつものように冷たい口調で返事をした。
「アナタは……どちら様でしたっけ?」
「あっ、ごめんなさい。私は前原瑠香と言います。えっと、一応誠也の幼なじみなんですよ」
幼なじみがいたなんて聞いていなかった。
隠し事をされたみたいで、瑞希の心が黒いモヤに覆われる。
誠也との関係は偽りの恋人──それだけなのはずなのに、なんだか負けた気がして自分が許せなかった。
「そう、幼なじみがいたなんて知らなかったわ」
「誠也から聞いてなかったんですね。もう、いつも肝心なことを言わないのは昔からなんだから」
瑞希自身が知らない誠也を知っている女。
理由が分からないが、それがなんだか許せない。
まるで誠也が突然遠くへ行ってしまったようで、胸がキューっと締め付けられた。
「そういえば最初の質問、誠也と本当に付き合ってるかよね? もちろん本当ですわ。昨日デートしたばかりですし、それに──お互い抱き合いましたからね」
負けず嫌いなのか、あの恥ずかしい出来事をあっさり告白する。
しかも脚色までして瑠香からマウントを取ろうとした。
「そう、だったんですね……」
瑠香は肩を落として本気で残念そうだった。
心ここに在らずでその場を離れてしまう。
そんな瑠香の背中を見た瑞希は、心の中で勝利したことを喜び、口元には笑みを浮かべていた。
「どーしよー、沙織ー」
「どうした、どうした。何があったのさ」
泣きながら親友である四ノ宮沙織に相談する瑠香。
噂が本当だったことが余程ショックなようで、立ち直れなさそうなオーラを撒き散らす。
ずっと言いたくても言えなかった好きというたった二文字。
今さら後悔してもその言葉を伝えることが出来ない。
瑠香は自分の勇気のなさに嫌気がさしていた。
「噂は本当だったんだよー」
「噂……? あぁ、鈴木くんと西園寺さんのね」
「これから先、私どーしたらいいかなー」
ふたりが付き合っているのなら、略奪愛くらいしか方法がない。
沙織は瑠香の頭を優しく撫でながら、ひとまず落ち着かせようとした。
「少しは落ち着いた?」
「うみゅ……」
「そうだねー、とりあえずさ、鈴木くんと話してみたら? 幼なじみなんだし、気軽にね?」
「そうだね、私、頑張る! 頑張って誠也と話してみるよ」
ついさっきまで涙目だったのに、急に元気を取り戻した瑠香。
小動物のような仕草が可愛らしく、沙織も微笑みながら暖かい眼差しを向ける。
親友であり妹のような存在。
同い年とはいえ、沙織はどことなくお姉さん気質。
怒ったことなど一度もなく、聖母のような性格だった。