冴えない男子は学校一の美少女氷姫と恋人になる
このまま疎遠に──と思われたが、高校が一緒だったことで、日常会話くらいはするようになる。
学校では恥ずかしくて話せないが、たまに道で会うとほんの少しだけ話したりした。
それが小さな幸せだった。
瑞希という存在が現れるまでは……。
「肉じゃが美味しいよね。瑠香ってこんなに料理が上手だったんだ」
「頑張ったんだよ、私、本当に頑張ったんだ。毎日お母さんの手伝いして、必死に覚えたんだよ」
「そうだったんだね。瑠香はいいお嫁さんになれるね」
箸が止まり爆発音とともに顔が赤一色に染る。
プロポーズされたような感じがし、再び妄想の世界へと旅立つ。
そこで描かれるのは誠也との甘い新婚生活。
おかえりのキスに始まり、手料理を振る舞う微笑ましい光景。
夢のような世界にうつつを抜かしていると、誠也の声によって現実世界へ戻された。
「瑠香今日はどうしたの? 今だってなんかニヤニヤしてたし」
「ひゃっ!? な、なんでもないっ」
心の声が漏れていないか心配で、上目遣いで誠也を見つめるも、普段と変わらない表情でひと安心。
もし声が漏れてでもいたら──二度と顔を合わせられなかっただろう。それくらい恥ずかしいことを妄想していた。
「そ、それよりさ、少しだけ話したいことがあるんだけど……」
「僕に話……? いいよ、それじゃ後片付けしたら僕の部屋に行こうか」
「う、うん……」
何年ぶりに入るであろう誠也の部屋。
幼い頃に入った記憶とかけ離れていて、なんだか新鮮な感じがした。匂いも違うし、大きさも小さくなった気がする──いや、自分の体が大きくなっただけ。
初めて入るような不思議な感覚に襲われ、瑠香はつい部屋を見回してしまった。
「そんなにキョロキョロしなくても、珍しいものなんてないと思うけど」
「ふぇっ!? え、えっと、昔に比べてなんだか狭く感じるなぁって」
「あはははは、だってお互い大きくなったんだから、そう見えるのは仕方がないよ」
「そ、そうだよねっ。私ったら何言ってるだろ」
「それで、僕に話って何かな?」
忘れてはいなかったけど、誠也の口から言われると緊張がさらに増す。心音が誠也に聞こえるほど大きくなり、胸に手を当て必死にその音を抑えようとする。
落ち着かないとダメ。
これは幼なじみとしての知る権利。
だから、恐れずに聞かないといけない。
瑠香は自己暗示でこの緊張を和らげようとした。
「あ、あのね、その……さ、西園寺さんと付き合ってるって、本当なの、かな?」
なけなしの勇気を振り絞った。
ちゃんと言えたんだから、自分で自分を褒めたいとも思った。
この先に続く返事が怖い。だけど、それを聞くために今ここにいるのだから。
学校では恥ずかしくて話せないが、たまに道で会うとほんの少しだけ話したりした。
それが小さな幸せだった。
瑞希という存在が現れるまでは……。
「肉じゃが美味しいよね。瑠香ってこんなに料理が上手だったんだ」
「頑張ったんだよ、私、本当に頑張ったんだ。毎日お母さんの手伝いして、必死に覚えたんだよ」
「そうだったんだね。瑠香はいいお嫁さんになれるね」
箸が止まり爆発音とともに顔が赤一色に染る。
プロポーズされたような感じがし、再び妄想の世界へと旅立つ。
そこで描かれるのは誠也との甘い新婚生活。
おかえりのキスに始まり、手料理を振る舞う微笑ましい光景。
夢のような世界にうつつを抜かしていると、誠也の声によって現実世界へ戻された。
「瑠香今日はどうしたの? 今だってなんかニヤニヤしてたし」
「ひゃっ!? な、なんでもないっ」
心の声が漏れていないか心配で、上目遣いで誠也を見つめるも、普段と変わらない表情でひと安心。
もし声が漏れてでもいたら──二度と顔を合わせられなかっただろう。それくらい恥ずかしいことを妄想していた。
「そ、それよりさ、少しだけ話したいことがあるんだけど……」
「僕に話……? いいよ、それじゃ後片付けしたら僕の部屋に行こうか」
「う、うん……」
何年ぶりに入るであろう誠也の部屋。
幼い頃に入った記憶とかけ離れていて、なんだか新鮮な感じがした。匂いも違うし、大きさも小さくなった気がする──いや、自分の体が大きくなっただけ。
初めて入るような不思議な感覚に襲われ、瑠香はつい部屋を見回してしまった。
「そんなにキョロキョロしなくても、珍しいものなんてないと思うけど」
「ふぇっ!? え、えっと、昔に比べてなんだか狭く感じるなぁって」
「あはははは、だってお互い大きくなったんだから、そう見えるのは仕方がないよ」
「そ、そうだよねっ。私ったら何言ってるだろ」
「それで、僕に話って何かな?」
忘れてはいなかったけど、誠也の口から言われると緊張がさらに増す。心音が誠也に聞こえるほど大きくなり、胸に手を当て必死にその音を抑えようとする。
落ち着かないとダメ。
これは幼なじみとしての知る権利。
だから、恐れずに聞かないといけない。
瑠香は自己暗示でこの緊張を和らげようとした。
「あ、あのね、その……さ、西園寺さんと付き合ってるって、本当なの、かな?」
なけなしの勇気を振り絞った。
ちゃんと言えたんだから、自分で自分を褒めたいとも思った。
この先に続く返事が怖い。だけど、それを聞くために今ここにいるのだから。