冴えない男子は学校一の美少女氷姫と恋人になる
「さっき話してたじゃない。その、誠也と……き、き、キスをしたとか……」

 顔面真っ赤になりながら『キス』という言葉を使う瑞希。
 普段とのギャップが可愛さを増す。

「ふぇっ!? あ、あの話聞こえてたのっ!?」

 瑠香も瑠香で、まさか昨日の出来事を他の人に聞かれたという事実に、動揺を隠せず瑞希よりも顔が真っ赤に染る。
 ふたりの時間が止まり、その場で固まること数分、冷静さを取り戻した瑞希がようやく口を開いた。

「──コホン。前原さん、単刀直入に聞くわね? どうしてカノジョ持ちの誠也と……キスをしたのかしら?」
「え、えっと、それは……」

 あれは事故であった、だから気にする必要なんてない。
 そう言えばきっと穏便にこの話は終わるはず。そう、ありのままを伝えればいいだけなのだが、瑠香の頭の中で悪魔の囁き声が聞こえた。

 誠也の態度からすると何か隠しているはず。
 このまま引き下がるのは負けるのと同じこと。
 悔しさが突然溢れ出し、つい対抗心を燃やしてしまった。

「幼なじみならそれくらい普通にするんですよ。私は誠也の幼なじみですからね」
「そ、そんな話、聞いたことないわよ」
「そう言われましても、私と誠也は……ずっと前からそうしてたんですし」

 冷静さを欠いた瑞希を見て、瑠香は心の中で勝利の笑みを浮かべる。
 憧れの存在とはいえ誠也を取られたくない。その気持ちが勝ってしまい、宣戦布告とも取れる発言を瑞希にぶつけた。

 後悔はしていない。
 二人の関係が怪しいのは間違いないわけで。
 そこで瑠香はさらなる追い打ちをかけようとしていた。
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