冴えない男子は学校一の美少女氷姫と恋人になる
「もしもし、あの、西園寺さん、今度のデートのことで電話したんですけど」
手元にある資料はマンガやラノベしかなく、誠也はそれらを参考にしデートの計画を立てた。それが瑞希に気に入られるか分からないが、ひとまず電話で伝えようとしていた。
緊張──心拍数は大きく跳ね上がる。
夜に女子と電話するなど生まれて初めての出来事。
制服姿でない瑞希が頭の中に浮かび上がるも、邪念を払い除け電話に集中しようとする。
「いいわよ、私も暇じゃないんだから手短にお願いね」
偽りとはいえ恋人に対して冷たい態度の瑞希。
デートの計画を丸投げしておいて、罪悪感の欠片も感じられない。
が……実を言うと、瑞希も夜に男子と電話するのは初めての経験。
共学だったのは高校からで、それまではずっと女子だけしか周りにいなかった。
初めて夜電話した男子が偽りの恋人──頭では分かっていても、実際は瑞希自身も緊張と照れくさが入り交じる。しかも、忙しいなどは嘘であり、暇を持て余していたくらいだ。
それなのに、この強気な発言は単なる照れ隠しなのか、それとも男嫌いだからこその発言なのか、本人でさえ分からなかった。
「え、えっとですね、行く場所は当日のお楽しみで、駅前に10時待ち合わせでどうかと思いまして……」
「そう、分かったわよ。デートはぜーんぶ誠也に任せるからね。そのかわり、目一杯私を楽しませなさいよっ」
通話時間は僅か1分という短さ。
とても恋人同士の通話とは思えない。
とはいえ、無事に要件を伝えられた誠也はホッと胸を撫で下ろした。
「こんな感じでよかったのかな。西園寺さん怒ってなかったよね……? でもこれであとは本番に備えるだけだよ」
緊張が一気に解けた誠也はベッドにダイブする。
何が正解なのか分からないが、ひとまず大仕事を終えその日はぐっすりと夢の中へ旅立っていった。
一方、電話の相手だった瑞希はというと──。
「何ドキドキしてるのよ私。誠也は単なる虫除けじゃないの。でも……初めてのデートの相手が誠也かぁ」
初めての異性との通話、初めてのデートの約束、初めてづくしで思考回路はパンク寸前。
別にタイプでもないし、好きになったわけでもない。それなのに、こんなにも胸がときめく自分が不思議で仕方がなかった。
「うん、深く考えるのをやめよう。これもすべて言い寄ってくる男を遠ざけるためなんだからっ」
偽りだと、演技だと、何度も自分に言い聞かせ、瑞希は顔をほんのり赤く染めながら、ふかふかのベッドで横になった。
きっと朝になればいつもの自分に戻れる。
そんなことを考えながら、瑞希もまた夢の中へ落ちていった。
手元にある資料はマンガやラノベしかなく、誠也はそれらを参考にしデートの計画を立てた。それが瑞希に気に入られるか分からないが、ひとまず電話で伝えようとしていた。
緊張──心拍数は大きく跳ね上がる。
夜に女子と電話するなど生まれて初めての出来事。
制服姿でない瑞希が頭の中に浮かび上がるも、邪念を払い除け電話に集中しようとする。
「いいわよ、私も暇じゃないんだから手短にお願いね」
偽りとはいえ恋人に対して冷たい態度の瑞希。
デートの計画を丸投げしておいて、罪悪感の欠片も感じられない。
が……実を言うと、瑞希も夜に男子と電話するのは初めての経験。
共学だったのは高校からで、それまではずっと女子だけしか周りにいなかった。
初めて夜電話した男子が偽りの恋人──頭では分かっていても、実際は瑞希自身も緊張と照れくさが入り交じる。しかも、忙しいなどは嘘であり、暇を持て余していたくらいだ。
それなのに、この強気な発言は単なる照れ隠しなのか、それとも男嫌いだからこその発言なのか、本人でさえ分からなかった。
「え、えっとですね、行く場所は当日のお楽しみで、駅前に10時待ち合わせでどうかと思いまして……」
「そう、分かったわよ。デートはぜーんぶ誠也に任せるからね。そのかわり、目一杯私を楽しませなさいよっ」
通話時間は僅か1分という短さ。
とても恋人同士の通話とは思えない。
とはいえ、無事に要件を伝えられた誠也はホッと胸を撫で下ろした。
「こんな感じでよかったのかな。西園寺さん怒ってなかったよね……? でもこれであとは本番に備えるだけだよ」
緊張が一気に解けた誠也はベッドにダイブする。
何が正解なのか分からないが、ひとまず大仕事を終えその日はぐっすりと夢の中へ旅立っていった。
一方、電話の相手だった瑞希はというと──。
「何ドキドキしてるのよ私。誠也は単なる虫除けじゃないの。でも……初めてのデートの相手が誠也かぁ」
初めての異性との通話、初めてのデートの約束、初めてづくしで思考回路はパンク寸前。
別にタイプでもないし、好きになったわけでもない。それなのに、こんなにも胸がときめく自分が不思議で仕方がなかった。
「うん、深く考えるのをやめよう。これもすべて言い寄ってくる男を遠ざけるためなんだからっ」
偽りだと、演技だと、何度も自分に言い聞かせ、瑞希は顔をほんのり赤く染めながら、ふかふかのベッドで横になった。
きっと朝になればいつもの自分に戻れる。
そんなことを考えながら、瑞希もまた夢の中へ落ちていった。