あなたの名前を【短編】
最近ひみかがわかったことは、あの男が“山本”と言うこと
「山本さん」
「どうも」
と、奥様と話しをしていたのをひみかが盗み聞きしたのでわかった。
今日もひみかは学校の帰りにパン屋さんに寄ろうと歩道を歩いていると、ポツポツと雨が降ってきた。
初めはポツポツだった雨も、パン屋の前にひみかが来た時は激しく降っていた。
(こんなにびしょびしょじゃ、店になんて入れない……)
ガラス越しにひみかは山本を見るとトボトボと帰って行こうとした。
「ちょっと待って」
パン屋さんの扉が開いた時、チリンチリンと鐘が音をたてて、優しい山本の声がひみかの足を止めた。