あなたの名前を【短編】


それからひみかはあのパン屋さんに立ち寄ることはなくなって1週間。




あのこおばしい香りも、甘いキスも、何もかもひみかの頭の中で繰り返される。



(会いたい)


その気持ちがあわなくなってからどんどん増していくばかり。



もし今日またパン屋さんの前を通ったら、必ず言おう。



私の気持ち。




もう後戻りは出来ない。ひみかは学校のチャイムとともにパン屋さんまでの道のりを走り出した。




ドキドキと高鳴る心臓がやけにうるさくて、引き返そうか悩んだまんま店の10メートル手前で立ち竦んでいた。




(行こう)




(前を通るだけ、前を通るだけ)




ふぅと息をはいて、気合い付けに息を吸うと、歩き出した。





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