あなたの名前を【短編】
「行くの?」
一歩進んだ足がピタッと止まった。
後ろから聞こえた声に振り向くと、間違えなくそれは山本。
スーパーの袋をぶら下げて、自転車を押していた。
「あっ…いや、あの!」
シドロモドロとひみかが動くものだから、山本はクスリと笑うとひみかに近付いた。
「あの!」
「何?」
ひみかはキリッと山本を見つめると、口を開いた。
「私、藤堂ひみかです」
山本は頷くと、同じようにひみかを見て
「山本啓」
お互い嬉しそうに笑いあうと、パン屋さんに入っていった。
おしまい