今はまだ、折れた翼でも
「お、おはようございます。あ、夜なのにそれはおかしいか……。えっと、はじめまして」
そう挨拶すれば、傷だらけの身体を起こして、少しばかり顔を歪めた。
ああ、彼の質問に答えていなかった。
「ここは、私の家なんです。下校中、あなたが道端に倒れているのを見つけて……。それで、連れてきてしまいました。あの、謝ります。大変申し訳ございません」
ベッドから降り、わけもわからず、けどもう全力で土下座をする。
これほどまでに誠心誠意込めて丁寧に土下座したことはない。これが初めてだった。
「……俺のこと、助けてくれたのか」
「えっと、言い方を変えればそういうことになります……」
自分で言ってて恥ずかしくなってくる。
「えっと、とりあえずお風呂に入りませんか!?温かいお湯を張っていますので!」
うちは旅館かなにかか。といつもだったら家族に総ツッコミされそう。
すると、彼はうつむきがちになりながら、小さく口を開いた。
「……ありがとう」
「……いえ」
「でも、ごめん。俺、帰るから」
「え、帰るって……」
立ち上がった瞬間、上にかかっていた毛布がはらりと落ちた。