今はまだ、折れた翼でも
……もしかして、藤咲市?

私はふと思いついた。

藤咲市は、望くんの出身中学があるところ。

公立校なら、きっと望くんの家もそこにあるはず。


でも、望くんの荷物はほとんど私の家においたまま。だから、たぶん違う気がする。

……いったん、家に帰って頭を冷やそう。

意外に家に帰ったら、望くんがいるかもしれない。

というかむしろ、そうであってほしい。


私はその場で十分に息を整えてから、今度は歩き出した。

帰りはいつもの通学路を通っていこう。


歩きながら、思い出す。

望くんと、初めてあった日のこと。

ちょうど目の前に、あの日に行ったコンビニが現れた。

ここで買った絆創膏の箱、結局雨でびしょびしょになってたけど。
< 101 / 198 >

この作品をシェア

pagetop