今はまだ、折れた翼でも
……望くんは、怪我をしていた。


でも、転んだとかそんな軽いものじゃなくて。あの日と———。いやあの日よりもずっとひどい怪我だ。



「どうして、こんな……」



なんだか、泣いてしまいそうだった。

泣いてる場合じゃ、ないのに。



「なんだよお前。そいつの彼女?」



とつぜん、近くからそんな声が聞こえてきた。

声色がするどくて、思わず身体が震える。


声のするほうへ向くと、高校生くらいの男の子が五人ほどいて、こちらを見下ろしていた。

その視線が怖くて、びくっと震える。なんだろう、この人たち……。



「ふーん。じゃ、そこの彼女ちゃん。……そのまま、黙って見てなよ」



五人のうち一人がそう言い、一歩前に出る。

“見てなよ”って、まさか。

また、嫌な予感がした。この人たち、望くんになにを—————。
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