今はまだ、折れた翼でも
するりとさっきの人がまた近づいたかと思うと。



ドンッ!!



思わず、耳を両手で塞いで目を閉じる。



「の、望くんっ!」



一瞬のことで、分からなかった。

私は急いで駆け寄り、殴られたであろうに触れる。



「ねえ、どうだった?今、君の“望くん”が傷付けられて、悲しいでしょ」



殴った人が私に顔を近づけて、にやりと笑う。私は反射的に視線を外す。

どうして、人を傷つけてそんなふうに楽しくいられるのだろう。


……ああ、分かった。

この人たちにとって、“白岩望”は大切じゃないから。気に食わないから。たぶんそんな理由。

でも、それなら傷つけていいってことになるのかな。……ううん、ならないと思う。



「無視すんじゃねえよ。あんたのことなんて、俺が一発やればどうにでもなっちまうぜ?」


「……それなら、そうしてください」



私は、下を向いていた顔をゆっくり上げる。暗闇にだんだん慣れてきた。

自分の声が、震えているのが分かる。


……望くんのことが大切だから。傷付けられるなら、私が代わりになる。



——————私は、望くんのことが好きだから。

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