今はまだ、折れた翼でも
「あれ、夜なのにずいぶん騒がしいなあ」



とつぜん、この狭い裏路地の入口のほうから声が聞こえてきた。

それも、聞きなれた声。


警戒したのか、全員の動きが止まる。

ぱっと、ずっと暗かったこの場所に明かりがさした。人工的な、光。


そして、その光の中から現れたのは。

「晃成、くん……」



全員がそちらに注目する。

ライトのついたスマホを胸元で掲げながら、声の主は余裕の笑みを浮かべた。


うそ、どうして、晃成くんがここに。

目の前にいるのは、まぎれもなく私の叔父だった。



「……あ?なんだよおにーさん。邪魔すんな」



興味が晃成くんに移ったのか、あっさりと望くんから手を離した。
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