今はまだ、折れた翼でも
私は急いで倒れそうになった望くんを支える。



「これ、暴力だよね。それで、このおにーさん、君たちのやってたこと、全部撮影してたんだけど」

「……っ」



殴ろうとしてた人が、息を飲むのが分かる。


晃成くんが、スマホの画面をこちらに向けた。

暗くてよく見えないけど、ちらちらとなにか動いているのが見える。

晃成くんはポケットにスマホをしまい、口を開いた。



「と、いうわけで、この動画を電子の海にばらまかれたくなかったら、正直に警察に引き渡されることだな。ちなみにもう、呼んであるから」


「……そんな、でたらめ、通用するわけないだろ」


「いや、でたらめじゃないんだよな。なんなら、もうすぐ着くんじゃないか?」



晃成くんがそう言った瞬間、たしかに遠くのほうでパトカーと救急車のサイレンが同時に聞こえてきた。

サイレンはだんだん近づいてきて、まるで本当にこっちに向かっているみたい。



「やばいんじゃないか、これ」

「おいお前ら、逃げるぞ!」



私の後ろにいた人たちがそう言って立ち上がり、五人はあわてたように走り出し、暗闇に消えていった。

< 109 / 198 >

この作品をシェア

pagetop