今はまだ、折れた翼でも
……あれ、終わった?

とたんに力が抜けて、身体が重くなる。



「映茉……あとはよろしくな。救急車も呼んであるから」



晃成くんの優しさがうれしくて、胸にしみる。



「ごめんなさい。……それから、ありがとう」


「ああ」



晃成くんはそのまま走ってパトカーのサイレンが鳴るほうへ走って行ってしまった。

私はその背中を見届けてから、目の前にいる望くんへ向き直る。

ちゃんと見れば見るほど、本当にひどい怪我だ。


あの人たちの様子を見てみると、望くんはやり返したりはしてないみたい。



「望くん……」



私は少し戸惑いながら、傷ついたその身体を優しく抱きしめた。

……傷、触れても、痛くないかな。

意識を失っているのか、もたれる身体が重い。



「のぞむく、望くん……っ」



もう一度名前を呼んだとき、明るい光であたり一帯が照らされた。

晃成くんのスマホの光じゃなく、もっと大きくて赤い。


……救急車だ。

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