今はまだ、折れた翼でも


今はあのときよりも傷がひどいような気がする。

なのに、俺は生きていたいと思える。

死んでもいいだなんて、これっぽっちも思わない。


それは、あのとき俺の止まっていた時間を動かした映茉の存在があるから。

だから俺は、今生きたいと思える。



—————大切な、鳥越映茉のために。




そして、俺は無意識に映茉への石井の攻撃を止めていた。

その手で、映茉に触るな。

なんて俺が言えたことじゃないはずなのに、気づいたらあんなふうに口走っていた。


だけどあれは、俺の本心なんじゃないかと思う。



あとは、覚えていない。

優しくて暖かいぬくもりに包まれた感覚だけが、残っていた。

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