今はまだ、折れた翼でも
入院から一週間がたち、俺は日曜日の朝に退院した。

この入院期間には映茉だけじゃなく映茉の家族も見舞いに来てくれ、石井たちの親は謝罪に来た。慰謝料の話とともに。

だが、やはり母親は来なかった。連絡も繋がらないようじゃ、この状況もきっと知らないだろう。

でも、そのほうが都合がいい気もしている。





「望くん。怪我大丈夫?……でも学校、行くんだよね」



月曜の朝。

玄関で、映茉が心配そうにつぶやく。

心配は、かけたくない。だが、俺はここで学校に行かないと、一生このままな気がした。



「ああ、テストもあるから」



すると、映茉は優しくふんわりと笑った。

そういえば初めて出会ったとき、俺は映茉のことを神様だと勘違いした覚えがある。

まあ実際は人間だが、あながち神様でも間違いではない。……いや、神様じゃない。女神か天使だ。


初めて北田高校の制服を着て、外に出る。

ひさしぶりに直であたる日差しが眩しい。


もう、夏だ。


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