今はまだ、折れた翼でも
北田高校は思ったより広くて生徒数が多い。

受験したあのときとは見える景色が全然違う。



「あの人が、うわさの?」

「うわー傷だらけじゃん。こっわ」

「顔面は悪くないけど、不良じゃあねぇ」



教室に向かう途中、いろんな声が聞こえてきた。

分かっていた。好奇の視線を向けられながらこんなふうに言われることは。



「望くん、もうすぐ教室だよ」


「……ああ」



隣で、映茉がにこにこと笑う。

この視線に会話。気づいてないはずない。きっと、気づかないふりをしている。

俺のことは別に、どうでもいい。だけど自分のせいで、映茉に辛い思いはしてほしくない。
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