今はまだ、折れた翼でも



とりあえずお風呂には早急に入ってもらった。

服は、前に家族に借りてそのままになっていたTシャツと膝丈の短パンを渡した。



私はその帰りを待ちながら、いつものようにベッドに横になる。けれど、なんだかそわそわして落ち着かない気分。

自分の家に誰か家族以外の人がいるって、不思議な感覚だ。

なにかすれば落ち着くかも。


そういえば布団を片付けていないなと思い、畳もうとその場にしゃがむ。

というところで、ガチャリとドアの開く音がした。



「風呂……ありがとう」



彼は照れたようにこちらから目をそらす。そんな反応をされるもんだから、私も恥ずかしくなってしまった。

少しばかり気まずい空気がこの狭い空間に流れる。

だって、まだ会って一時間か二時間かそこらしか経っていないのに、自分の家にいて、お風呂に入ってて……。

ああ、だめだめ。余計なことは考えないよ!

特に話題を振ってくることもなかったので、ここは私から話しかけることにした。



「えっと、あの、急にで……、戸惑いますよね。わ、私は決して怪しいものではありませんので。ただの、一般人です」

「ああ、どうも……。名前、聞いてもいいか?」

「え、名前?」



思わぬ返答に首をかしげる。あれ、もしかして私、自己紹介してなかったっ!?

やってしまった〜!これじゃ私、ただの不審者だよ!
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