今はまだ、折れた翼でも
家にさんざん電話をかけてきた担任の山川は、朝礼でも俺が教室にいることについて特に何も触れなかった。

でも、そのほうがいい。


席は、まるで転校生かのように枠内から一つはみ出したような場所。

別にそれでもいい。今日はクラスではずっとテスト返しらしいが、俺は別室で期末テストを受けていた。

あの日もし石井たちに会わず怪我もせず、先週テストを受けられていたら、映茉の小さな背中を眺めながらテストを受けられていただろうかと考える。


そしてもし、俺がもしちゃんと北田高校を受験したいと思って受けて、受かって。一年二組になって。毎日学校に通っていたら。

ただのクラスメイトである鳥越映茉に恋をしていたのだろうか。


……たぶん俺は、映茉とどんなふうに出会っていたとしても、恋に落ちていたと思う。


だって映茉には、一目惚れだったから。


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