今はまだ、折れた翼でも
カーディガンの裾を両手でぎゅっと握りしめながら、そう決意したとき。



「……もしかして、あなた」



ふいに、どこからか声が聞こえてきた。

俯いていた顔を反射的にあげると、そこには見知らぬ男子高校生が立っていた。



「……えっ」



男子高校生は四角いレンズ越しにまっすぐこちらを見つめてくる。

私はびっくりして、思わず小さく声をあげた。

見たことのない制服。知り合いでもなければどこかで見かけた覚えもない。


しばらくそのまま動かなかったため、まさかと思い勇気を出して話しかけてみた。



「あ、あの、も、もしかして。私……ですか?」



間違っていたら恥ずかしいなと思ったけれど、男子高校生は頷いた。



「はい。……あの誤解だったら、無視していただいてもいいです」



柔らかな風に吹かれながら、男子高校生は一呼吸おく。

そして、口を開いた。


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