今はまだ、折れた翼でも
「……白岩望を、知っていますか」


「え……」



驚いて、思わず声が漏れる。

だって……。



「……やっぱり、僕の勘違いだったみたいです。ごめんなさい。では、これで」



男子高校生はぺこりとお辞儀をして行ってしまう。

あの人……望くんのことを知っていた。

どういうことかは分からない。けど……。



「あ、あのっ!」



風邪でかすれた声で精一杯叫ぶ。

こちらに向けられる視線は気にならなかった。

男子高校生が立ち止まって振り返る。



「あの、私、知ってます!」



もう一度思いっきり叫んだら、男子高校生が私のほうへ戻ってきた。

呼吸が、乱れる。



「ほんと、ですか」



驚いたように、でも確信したようにそう問われる。

私は、ゆっくりと頷いた。



「とりあえず、あの公園に入りましょう」



男子高校生が指差した先は、学校の目の前にある大きな公園。

私たちは奥のほうまで入り、川の近くのベンチに並んで座った。
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