今はまだ、折れた翼でも
「あの、私のことを見かけたのって……。病院だったり、しますか?」



おそるおそる言ってみると、竹林さんは驚いた顔をした。



「……そうです。よくわかりましたね。実は、この近くにある大城病院に父が骨折で入院していまして。お見舞いの帰りに、院内の病棟で見かけたんです」



……大城病院。望くんが怪我をしたときに入院していた、この辺では一番大きな病院だ。

望くんと同級生なら竹林さんが住んでいるのもたぶん藤咲市。隣の市なら、ここにある大城病院に入院していても納得できる。

なら、竹林さんが見かけたのは、望くんのお見舞いに行ったときの私。お見舞いは、いつも夕方に行っていたから。



「……病棟に居たってことは、誰か知り合いが入院を……。いえ、踏み込みすぎた質問でした」


「……望くんが、入院していたんです」

「え?」


「望くん、喧嘩に巻き込まれて。それで……」


「そう、だったんですか」



竹林さんは私の言葉に返事をすると、驚きもせずゆっくりと前を向いた。

まるで、喧嘩に巻き込まれるのが日常茶飯事だったみたいに。

もしかしたら、竹林さんなら望くんの喧嘩の理由を知っているかもしれない。
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