今はまだ、折れた翼でも

「てか、小学生の頃はあんなに勉強が苦手だったのに、ここまでよく頑張ったよなー。やっぱオレの教え方がよかったのかなっ?」



翼が笑いながら頬をツンツンしてくるので、「なんだよ」と言って睨んでみる。



「あははっ、そんなに怒んなよ。見てほら、お前の顔ひどいぞ」



翼がどこからか取り出した鏡を俺に向けてくる。俺はそれに反論しながらふと鏡を見てみれば、たしかに眉間にしわの寄った顔をしていた。



「な?今から根詰めてもしょーがないって。望なら出来ること、翼おにーちゃん知ってるし?」


「……ああ、ごめん。……ありがと、翼」



お礼を言えば、翼は笑って部屋から出ていく。

昔から、翼は誰かが落ち込んでいたり元気がなかったりするとほっとけない人だった。

例えば、流星が友達ともめていたら、さりげなく相談に乗っているのを俺は見たことがある。


今だって、翼のやり方で俺のことを元気づけてくれたのだろう。

……こんなに優しい人が、まさかあんなふうになるなんて————。


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