今はまだ、折れた翼でも
……電話の相手から告げられたのは、翼が交通事故にあったことだった。

車にひかれて、意識不明。


俺は電話を切って、勢いのまま玄関のドアを開けて駆け出していた。


翼、翼、つばさ————っ!


走っている間、頭に浮かぶのはたった一文字。

警察の言葉は信じられない。自分で確かめに行きたい。そうしないと、納得できない。


翼の通学路なら、一度だけ本人に連れて行ってもらったことがある。

北田高校に行くまでの道。俺はただひたすらに走った。


電話で伝えられた場所には、数人の警察と車が一台だけがあった。

翼はもう、救急車で運ばれたのだろう。

いや、それすらほんとなんだろうか。事故にあったのは、ほんとに白岩翼なのか。


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