今はまだ、折れた翼でも
そして、3月。


俺の中で“高校に行く”という選択肢はもうなかったが、なぜか反抗もできずに会場まで母親に連れていかれ受験させられた。

そして受験の帰りに、『あなたの中学時代はここまで』と言われいつの間にか購入されていた新しいスマホを携帯ショップで渡されて、持っていたスマホのデータを移すことなくその場で契約が解除されて処分された。


所詮は親子。そのつながりはどうやったって切れなくて。母親が俺を『翼』に染め上げようとしたことについて本人にはなにも言えなかった。

翼が今ここにいないのは、どうやったって事実なのだから。


でも、母親が俺を『翼』にする計画が終わる日がやってくる。

それは、北田高校の入学式だった。

俺は初めて、母親に強く反抗した。


俺が出た行動は、まず卒業式の無断欠席。ついでに高校の入学式にも出なかった。

卒業式のこともあってか、入学式ではより母親に怒られた。



『なんであなたは翼にならないの!』



と。そして、こうとも言われた。



『翼にならないあなたに、価値などない』と。



俺は、まるで本当に翼が生えたようだった。

自由になって。もう、縛られない。

俺はこれで本当に、『翼』ではなくなったのだ。


< 153 / 198 >

この作品をシェア

pagetop