今はまだ、折れた翼でも
担任が学校に来いとうるさい。しかも名乗らずとつぜん怒声を浴びせてくる。うるさいし、出なきゃ出ないで永遠にコールを鳴らし続けてくるので、電話線を切ってやろうかと思っていた頃だった。


あの入学式以来家に帰ってない母親のいないこの家は、わりときれいで。

けど、ある日たまたま押入れを開けたら、物が飛び出してきてあっという間に散らかってしまった。


俺はイライラしながらとりあえず物を押しのけていると、一つのノートが目に入る。

表紙には、『オレの日記』と書かれていた。

“オレ”って誰だよ、と思いながらノートを手に取り何気なくページをめくってみれば、最初のところには中学の入学式についてつづられている。

翼か、流星か。でも、流星はこういうまめなことはしないだろうから、多分翼のもの。


他人の日記を見たらまずいかと思いながらも、好奇心に負けて最後までパラパラとめくってしまう。

中身は極力読まないようにしたものの、俺は最後のページに釘付けになってしまった。

一番上に『大切な人』とタイトルがあり、上から父さんと母さん、俺、流星の名前が大きく書かれている。

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