今はまだ、折れた翼でも
17 あの場所で
私は竹林さんに、望くんについての話を聞いた。

望くんは三人兄弟のまんなかで、一番上のお兄さんは事故で今も意識不明であること。

ご両親が離婚されていること。

今年の1月から喧嘩をしていること。



「去年の11月くらいでしょうか。学校で、望の両親についてのうわさが広まりました。望本人が知っているかどうかは分かりませんが、真実とはだいぶ異なるうわさで。……それを、望が知らなくとも気にしなくとも、僕は許せなかったのを覚えています」



許せなかった、という竹林さんの表情は、どこか寂しい。

私は、胸が苦しくなった。



「喧嘩の理由は、残念ながら分かりません。望の喧嘩の件については瞬く間に学校中に広まりましたが、うわさは全て否定せず、そのまま学校には来なくなりました。何度も電話や連絡をしましたが、連絡は全て無視。電話も一度しか出てもらえませんでした」


「その……一度だけ出てもらえたときは、お話しできたんでしょうか」



心苦しいと思いながらも、私は聞いてしまう。

その問いに、竹林さんはふんわりと頷いた。

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