今はまだ、折れた翼でも
突然、リビングに大声が響いた。
何事かと思ってすぐ近くにあるドアの方を見ると、大声の主は厳しそうにこちらを見ている。
今ちょうど外から帰ってきたようだ。
「晃成くん、今日は早いねー!」
「おばさん、ただいま!」
その人はキッチンにいるお母さんに挨拶すると、また険しい顔でこちらを向く。
「ごめんなさい、晃成くん!勝手に服を借りちゃいました!」
私は晃成くんに頭を下げて謝る。
晃成くんというのは、私のお父さんの弟。つまり、私の叔父にあたる人。
実をいうと、服を借りっぱなしにしていた家族っていうのは晃成くんのことなんだ。
「いや、それ俺も忘れてたしいいよ。というかそれより、この金髪男は誰だよ!」
「……お邪魔してます」
「晃成くん、お客さんに失礼でしょー。はい、とっとと手を洗う!」
私が頭をあげた瞬間、目の前にタオルが飛んできた。
晃成くんが、瞬時にぱしっと一つの狂いもなくそれを掴む。
「おお、あっぶねー。おばさん、そろそろキッチンからタオル投げつけてくるのやめませんかー?」
お母さんがその言葉を無視してしまい、もうーと口を尖らせる。
そして、バシッと白岩くんを指さした。
「あとで絶対、問い詰めてやるからな!」