今はまだ、折れた翼でも
もしかして、この部屋にいるのかな。

ノック……しても、大丈夫だろうか。

そして、これまたすてきな洋風デザインのドアを三回たたこうとしたとき。



「で、母さんは今どうしているんだ。今のお前の話をざっくり聞いたところだと、その入学式以来会ってないだろ」



流星くんの声が、はっきり聞こえた。

どうしよう、今ここで入っても……邪魔しちゃう気がする。

私は軽く握った右手を下ろす。


すると今度は、望くんの声が聞こえてきた。



「……まあ、そうだけど。帰ってる気配はなさそうだし。父さんだって、母さんと連絡つかねぇんだろ」

「ああ。この前父さんの銀行口座から、母さん名義で金が振り込まれてたらしい。父さんが確認の電話入れたんだけど、電話番号が変わってたっぽい。銀行口座も気づいたときには、もう解約されていた」



盗み聞きしちゃいけないって分かってるのに、足が動かない。

< 183 / 198 >

この作品をシェア

pagetop