今はまだ、折れた翼でも
あの家はもともと望くんたちの父方の祖父母に当たる人のお家みたいで、離婚されてからは流星くんは四人で住んでいたみたい。

望くんがあの家に行ったことがなかったのは、望くんのお母さんが望くんのお父さんと結婚するときに、祖父母の方と言い争いをして不仲になってしまったからだという話だ。


もう一緒には住めないけど、遠くにいるわけじゃないし、行方が分からないわけでもない。

そう思うと、心が少し軽くなる。

でもやっぱり、寂しい気持ちはほんのちょっとだけあるけど。


藤咲市にある望くんのアパートは、売り払わずそのままにしておくことになったみたいと望くんから聞いた。

「翼と母さんが、いつでも帰ってこれるように」と。

だから私たちは二人で毎週末藤咲市のアパートに行って、荷物の整理をしたり片付けをしたりしている。


このことは、私からやりたいと申し出たことだった。

望くんはあっさりと承諾してくれ、私にとって藤咲市に行くのは小さな楽しみだったりする。

小さいころの望くんの写真とかも見れて、新鮮な気持ちだ。



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