今はまだ、折れた翼でも



「……そうなのか。でも、無事でよかったよ」

「今もひどい雨よね。お父さんも晃成くんも一応濡れてはいないみたいだけれど、えっと、白岩くんだっけ。風邪、引いてないといいけど。夏だけど少し厚めのお布団を用意しておくわね」



少し心配しながらそう言うお母さん。

確かにさっきから雨風が窓を叩きつけるすごい音がするし、この中を気を失っている白岩君を担いで歩いてきたなんて今でも信じられないよ。


……え、あれ、いまお母さん、なんて言った?



「じゃあ、みんな食べるか」

「そうねぇ~」



穏やかにおばあちゃんが言い、お父さんと二人で箸に手をつけようとする。



「ちょ、ちょっと待て!」



やっと手の呪縛から放たれた晃成くんが、勢いよく手のひらを広げて止まるよう合図する。

ざざあっと雨音が部屋に響いた。
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