今はまだ、折れた翼でも
病院についたときにはもう、流星くんたち家族がいた。

息が切れ切れで辛い。望くんが背中をさすって心配してくれたけど、私は大丈夫だといった。

強がりじゃない。私なりの、意思だ。



その後、みんなで翼さんの病室に入った。

今は目を閉じていて、眠っているらしい。

ゆっくりと、流星くんがベッドに近づく。



「兄ちゃん、兄ちゃん……っ!」



流星くんは涙を含んだ声で小さく叫ぶ。

おそるおそるというふうに、翼さんの身体にそっと触れた。



「あっ……」



流星くんが小さく声を漏らす。

……翼さんが、目を開けたのだ。



「……うっ、兄ちゃん、兄ちゃん……!」



部屋の中では、流星くんの静かな泣き声と、流星くんのお父さんの鼻をすする音だけが聞こえる。

しばらく、五分くらいたったとき、翼さんの身体が動いた。

ゆっくりとその左手が持ち上げられ、翼さんをまっすぐ見つめる流星くんの頬に手のひらを当てる。
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