今はまだ、折れた翼でも
「映茉ー。白岩がきたぞー」
「はーい!」
一階から晃成くんの声が聞こえ、返事をしながらあわてて階段を降りる。
「ありがとう、晃成くん」
「いいから。早く行ってやれよ」
インターホンの前に立っていた晃成くんは、パリッとした黒いスーツを着ている。
今年の春に大学四年生になった晃成くんは、本格的に就職活動をしているみたい。
「うん。ありがとう……!」
「ああ」
晃成くんに見送られながら、私は玄関のドアを開けた。
その瞬間、春の風が舞い込んでくる。
「……望くん」
扉の先には、私の大切で大好きな、望くんの姿があった。
「映茉、おはよ」
「お、おはようございます……」
付き合ってもうすぐ8か月ほどになるけど、いまだにこの望くんのまっすぐな視線には耐えられない。
頬がほんのり紅潮していくのがわかり、恥ずかしくなる。